トランプの意識的勘違い

トランプは本来は高額所得者保護をねらっている。しかし、外見上はアメリカの雇用を取り戻すことが大統領選挙で自分を支持した白人ブルーカラー層への恩返しをしているようにみえる。そして、不公正貿易の結果、自動車産業などの白人ブルーカラー層の職が奪われ、不満があふれているとみて政策を次々と打ち出し、国内問題を対外政策の問題にすり替えている。今まで米国は資本主義の原理に従って利益を追求しグローバル化を進め、史上最大の利益を上げてきた。その結果、白人ブルーカラーなどの生産業を中心とした国内産業は衰退し、ソフト産業の利益は急成長していった。2015年の「フォーブス」の世界長者番付では1位がマイクロソフトのビル・ゲーツで約9兆円、3位が投資家のウォーレン・バフェットで約8兆円、5位がオラクルのラリー・エリクソンで6兆円など、10位までに5人入っている。この事実を見れば決して不公正貿易が白人ブルーカラーの職を奪っているのではないことは明らかである。企業が利益を追求した結果として職を失ったのであって、資本主義の原理がそうさせたのだ。このグローバル化の流れを止めてしまえば米国の利益は失われ、白人ブルーカラーばかりではなく、ソフトウェア産業のホワイトカラーさえも職を失いかねない。米国の白人ブルーカラー層の救済は対外問題ではなく、国内問題だ。一人で数兆円もの資産を持つものがいるということは明らかに国内の資産(ひいては所得)の分配がうまくいっていないことを示している。ソフトウェア産業が利益を上げているのは数人の優秀な人間の労働の結果ではない。いままで人類の累積された知識(累積された労働)の結果である。数人の優秀な人材の労働が新たな価値を創りだしたことは確かだが、人類が綿々と累積してきた知識から生まれる利益も同時に自分のものとして享受しているのだ。一人の人間の1年間の所得は1億円もあれば使い切れないほどのものである。とすれば、残りの数兆円は累積された労働としてすべての人々に分配されるべきものだ。トランプは国外批判などするよりも国内政策を見直すべきなのだろう。

使用価値とICT技術革新

使用価値は労働によって創りだされるわけだが、ICTの技術革新によって、労働を必要としない環境が整うと、使用価値は機械によって作り出されるのだろうか。そうではない、ICTの技術革新も実は人間の労働の蓄積なのだ。今までの労働価値説は現時点の労働を扱っていたが、ここまで技術が進歩すると、人による労働は減少していく傾向にある。しかし、この技術進歩は導入した会社やICTの技術会社の労働だけによるものなのだろうか。実は、この技術進歩はこれまでに蓄積された労働(経験)に他ならない。この蓄積はその時点で発明あるいは発見した者や会社のものではない。社会全体の労働の蓄積なのだ。この利益は社会全体に還元されなければならない。