• さようなら! 太陽も海も信ずるに足りない

緊急事態宣言の危険性

 新型コロナウイルスの拡大に伴い危険性や恐怖感を煽り、それを利用しようとする安倍自民党の政策が透けて見えてきた。感染の初期の段階ではオリンピックの開催を危惧してか感染者を低く抑えたいという意思から検査を低く抑え、批判が大きくなると検査拡大に踏み切らざるを得なくなった。今度は今までとは逆に感染拡大防止を謳い文句に「緊急事態宣言」なるものを提唱はじめた。これは「憲法改正」と結びつくと考えた方がよい。憲法には戦争放棄で戦争をしないのだから緊急事態には至らないという考え方から、緊急事態条項がない。もともと安倍自民党には憲法に例外条項(緊急事態条項)を設けようとする声があった。この「緊急事態宣言」は明らかにこの憲法改正を射程に入れている。ほかの政党も消極的ではあるがこの「緊急事態宣言」に同調しつつある。まさに、これは私権を抑制し国家権力を強化することを目的とする法律化であり、正面切って反対する政党は皆無で、国会自体が戦前のような大政翼賛会になりつつある。
 自ら危機感を持って、会社をサボったり、フランスのルーブル美術館の従業員のボイコットなど、個人の意志でイベントや会社を休むのは自由だが、個人に対して国家や社会さらには会社がとやかくいう問題ではない。国家は個々人のさまざまな行動により生じる個人の損害を補償するだけでよい。

 最後に、前にも引用したが辺見庸の見解を紹介する。

ワイマール憲法は国民主権・議会制民主主義の採用のほか、はじめて社会権の補償について定め、20世紀民主主義憲法の先駆けといわれるが、その48条(大統領緊急令)はシュミット*の考えのとおり、非常事態(例外状態)において大統領が強力な執政権を行使することを認めている。大統領は基本的人権を一時的に停止できる、と。ここにナチスがつけいった。
 疫病や不況の蔓延は、人びとをいらだたせ、即決で政治の方向性を定められない、いわゆる“決められない民主主義”より議論ぬきの「カクラマチオ」(熱狂と喝采)を求める傾向がある。これはいま流行の反知性主義とも合体し、<ぐずぐず考えるな、とにかく従え!>というファシズムを形成しつつある。待ったなし、新型肺炎との戦いがすべてに優先する・・・というアクラマチオは、しかし、“内面の新型ウイルス”をますます制御不能のものに変異させている。

辺見庸「非常事態宣言」『生活と自治』2020年3月
*:ドイツの法・政治学者カール・シュミット(1888-1985年)。正しい政治が復権する条件は議会制民主主義ではなく、権力者が民衆の人権を果断に制限し、強力な執政権を行使する「例外状態」にあると主張

 そして、次のように結んでいる。

「人間中心主義者」。カミュは『ペスト』のなかで市民らを皮肉っぽくそう呼び「ヒューマニスト」のルビをふった。人間中心主義者がいつしか変異して、いまの危うい非常事態を支えている。

辺見庸「非常事態宣言」『生活と自治』2020年3月

 まさにそのとおりである。人間中心主義者を標榜する「立憲民主党」「国民民主党」「共産党」やその他の市民団体も「非常事態宣言」を支えている。

補遺1:
 5日のニュースで「共産党」・「社民党」は反対したとある。しかし、ただ口頭で反対を表明しただけで、論理的に反対はしていない。むしろ報道の「もっと規制しろ」という声に押されて、控えめな反対となっている。反対ならなぜ反対なのかを記者会見などして公に表明すべきだ。もしなにもしないなら、「立憲民主党」などと同じである。

補遺2:
 内閣官房国際感染症対策調整室は6日、TV朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正に関する発言「首相が『後手後手』批判を払拭(ふっしょく)するため」に対して次のようにツイッターで反論したという。

朝日新聞インターネット版2020年3月6日 20時14分より

 この「あらゆる事態」が問題で、例外条項を内閣で自由に決定できることを意味し、これを憲法に適用した場合、民主主義政治とは異なる独裁政治となることは明らかである。

補遺3
 11日の国会中継で共産党・社民党が「緊急事態宣言」に反対したが、基本的に「国家を開いていく」ということを前提にしない「社会国家主義」政党はスターリニズムの変形にすぎず、「国家社会主義」(ファシズム)政党である安倍自民党と本質的には同じである。
 ありえないとは思うが共産党・社民党が政権をとったとしても、政権を維持するため、できれば「緊急事態宣言」を憲法に組み入れたいと思うに違いない。国家の枠から逃れられない政党は同じ立場に至れば必ず同じ結果をもたらす。一般大衆の不安感や恐怖感を煽って観念の共同性を利用する支配者の論理である。党派は一見違っているように見えるが、本質的には同じである。

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